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PETによるがん検診について

最近PETによる「がん検診」の話題を新聞やテレビで見かけることが多くなりました。有料で値段は高くても、新しくてよい検診なら受けたいと考えられる方も多いようです。でも、ちょっと待ってください。本当にPET検診は有効なのでしょうか?

PETとは

ポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略で陽電子放射断層撮影のことを言います。フッ素を結合させたブドウ糖を用い、体外からブドウ糖の集積した部位を見つけ出す原理です。つまり糖が集まりやすい部分がわかる装置です。装置自体は20年以上前から既にあり、当時は主に脳代謝の研究に用いられていました。その後、糖代謝の盛んな「がん」に集積することが分かり、今では「がん」の転移巣の確認や「がん」の進行度を確認するのに使われています。その意味では有益な検査です。

検診としては有効か?

「がん」の検診について有効かどうかの判定は、1)早期に発見できる、2)早期に治療できる、3)その結果生存率が延びる(長く生きられる)、の3つが決め手と言われています。
まずPETで早期の「がん」が見つかるかどうかですが、よく「5mmのがんでも見つかる」と宣伝されていますが実際はどうでしょうか。実は確かに5mmの「がん」が見つかることはあるのですが、もっと大きな「がん」が見つからないこともあるのです。G6Paseという酵素の多い「がん」ではブドウ糖が排出されてしまうので、ある程度大きくならないと写りにくく(肝臓がん、腎臓がん)、また糖代謝の少ない「がん」は写りにくいと言われています。粘液が貯留するタイプの「がん」、壊死が多い「がん」も見つかりにくい(のう胞性卵巣がん、胃のスキルス型の「がん」、肺胞上皮がん等々)と言われています。また糖が生理的に集まる部分(脳、胃や膀胱)に生じる「がん」も集積した像が重なりますから分かりにくい(脳腫瘍、膀胱がん、前立腺がん、胃がん等々)という欠点があります。また、炎症がある部分にも糖が集まりますので炎症と区別がつきにくいという欠点もあります。

これでPET検診ですべての「がん」が必ずしも早期に発見できるわけではないことがお分かりいただけたでしょうか。2)の早期治療も 1)の早期発見が出来なければ不可能です。
3)の生存率が延びるかどうか(検診したことにより長く生きられるかどうか)についても実はまったく分かっていません。米国の国立のがん研究機関NCIでもPET検診は勧めていません。世界的にがんの早期発見目的でPET検診が行われている国はありません。

PET検査の役割

現段階で有望視されているのはPET検査とCT検査(特にヘリカルCTというタイプのCT)を組み合わせて肺がんの検診に使えるのではないかという試みです。ヘリカルCTだけでは多くの異常(主に腫瘤陰影)が見つかり、過剰診断という問題点が指摘されています。つまり「がん」でない小さい腫瘤が検診でひっかかる割合が多くなるのです。「がん」であるかどうかを判定するには腫瘤の一部を採取して検査する必要がありますが、検診でひっかかった人全員をそのような検査に回すことは(採取に伴う医療事故や合併症のリスクもありますから)現実的ではありません。そこで、CT検査だけでなくPET検査を組み合わせてCT検査で見つかった腫瘤陰影が果たしてがんの可能性が高いかどうか「ふるいわける」のに使えないかという検討がなされているところなのです。しかし、繰り返しますがまだこの試みでさえ検討段階であり、確立した肺がん検診ではありません。

また、脳腫瘍については上述のように、早期の脳腫瘍の発見に結びつくという報告はありませんが、既に脳腫瘍を起こした方の再発の鑑別や脳腫瘍の性質の判定(特に神経芽細胞腫でハイ・グレードかロー・グレードかが分かる)、(MRIと組み合わせて)手術や放射線治療の前の位置決めなどには使われています。また食道がんの遠隔転移を見つけるのにもCT検査よりPET検査が有用だと言われています。乳がんでも(脳以外の)遠隔転移を見つけるのにPETが有用だとの報告がなされてきています。頭頚部の「がん」の再発をチェックするのに有用だとも言われます。

つまり、PET検査の役割としては 1)他の検査(CT検査やMRI検査)と組み合わせてある種のがんの「ふるいわけ」診断に使える可能性がある、2)既に「がん」と診断された方の進行の度合い(遠隔転移など)を判定するのに有用である、3)ある種の「がん」の再発をチェックするのに有用である、ということが分かってきています。

最後に

PET検診はあくまでも検診としては有効性が認められていない研究段階の検診です。PET検査はすべての早期の「がん」を見つけてくれるほど万能の検査ではありません。私個人としては研究途上の検査をお金をいただいて行うことは、例え国立の「がんセンター」であろうと、間違っていると思います。有効性を確かめようとするなら、無料で行うべきものと考えます。
さらに民間業者が多額のお金をいただいて「早期のがんが分かる」と宣伝して検診したり、果ては他の国にまで「検診ツアー」を組む旅行会社が出てくるなど、一部の業者のお金儲けの道具になっているような異常な事態が続いています。PET検診受診を考えておられる方はPET検査の実際の判定能力や限界をよく理解して、その上でお決めになることをお勧めします。

南山堂『治療』誌
2004年1月号
「今月の視点」

特集
プライマリケア医の
ためのグロ−バル
スタンダ−ドの医療
編集 : 前田賢司

内科専門医とは?
消化器病専門医とは?
米国内科学会とは?
米国内科学会
フェロー(FACP)とは?

当院理事長/
院長の前田賢司は
専門医資格および
海外の資格として、
上記の4つの資格を
取得しています。

熱性痙攣とは?
一見、自分の子供が
大変な状況に陥って
いるように思える、
熱性痙攣(けいれん)
その正しい対処法を
お伝えします。
著 :
米国小児科学会
訳 : 前田賢司

マスメディアの中の
代替医療

指圧や鍼灸
免疫療法・健康食品
アロマセラピーなどの
代替医療。
それらのマスメディア
での扱われ方から、
正しい代替医療の
見分け・利用法を
探ります。

ビタミン剤やハーブ類の
サプリメント効用について

テレビ・雑誌等で
話題のビタミン剤や
サプリメント
果たして、その効用
とはどのようなもの
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PETによるがん検診に
ついて
PETによるがん検診が
話題になっています、
その有効性について

PSA検診の問題点
血液検査で出来る
前立腺癌の検査、
PSAスクリーニング
だがその検診に対し、
疑問点などを
するどく指摘する。

文献集
当院理事長/院長の
前田賢司が、
「内科専門医会誌」
「治療」誌(南山堂)
などに最近書いた
文献集です。

巻頭言
当院理事長/院長が
内科専門医会誌
巻頭で21世紀の医療
と内科専門医会に
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