
我が国の3大新聞と言われる3紙の朝刊を見てみると毎日必ずと言って良い程、健康食品や補助食品の広告が目にとまる。一般週刊誌や女性誌も同様である。

中でもとりわけ目につくのは出版社が自社の本の広告として載せる形のもので、いわゆる『バイブル商法』まがいのものであろう。
(1)出版物広告の形をとるもの(バイブル商法まがいのもの)

バイブル商法とは自分の著書で薬効を謳い単なる健康食品をあたかも医薬品であるかのように思わせ、荒稼ぎをする一種の詐欺の手口だが、
※注1.我が国では既に江戸時代からこのような商法があったと言う。

この種の広告には共通する特徴を有しているものが多い。以下、その特徴を挙げる。
[1]大袈裟な見出し

「〜で〜が治った!」とか「驚異の〜」、「我慢できない〜が消えた!」「劇的に効く!」などの仰々しいキャッチフレーズが多く、さらにそれでも足りないかのように「医療現場を揺るがす凄い効果!!」「〜治療に革命!」「末期ガンにも効いた〜のすごい威力!」「副作用のない〜の驚くべき自然治癒力!」などのサブ・キャッチフレーズが踊る。
[2]権威を印象づける演出

本の著者や監修者には医学博士や元○○大学教授、○○研究所所長などの肩書きがついているものが多く、広告の読者にあたかも権威のある人物が書いた医学的に正しい本と思わせる仕組みになっている。

「国立がんセンターで実証!」とか「○○国ではガン治療薬として認可、日本での特許取得!」などの文章が付いて更に権威を高めている広告もある。

これらは心理学では「光背効果(ハロー・エフェクト)」(仏像の後の光背が仏像を引き立ててありがた味を増す効果の事)と言い、
※注2.身近な詐欺の例で言えば「消防署の方から来ました」と言って消火器を売りつける商法で「消防署」という「権威」が使われるのと同じ事だという。
[3]一見具体的な経験談

広告によっては「14cmあった卵巣ガンが親指大に縮小、手術も大成功(48歳女性・主婦)」「〜に転移したガンを〜が退治!(女性・77歳)」などの『具体的な経験談』が匿名で載っているものがある。

しかしここで疑わなければならないのは「話に真実味をもたせて人を信じ込ませるには抽象的な話よりもむしろ具体的な
※注3.『騙しのテクニック』の方が説得力を持つ」という事実であろう。

確かに「UFOが着陸し、周囲の住民が怪我をした」という荒唐無稽なニュースを頭から信じる人は少ないだろうが「新潟県南魚沼郡塩沢町に2月16日午後4時20分頃銀色に輝く直径約12メートルの未確認飛行物体が着陸し、その際周囲の住民2名が重症、13名が軽症を負った」と具体的に報道されれば本当かなと思う人も出てくる。

この種の経験談は具体的であればある程、眉につばを付けて読む必要がある。
[4]ある特殊な商品(または食品)を勧める文面

「○○で〜が治った!」の『○○』にあたるのが商品にあたる。実際に広告の本を購入してみて、結論としてその商品を販売するという体裁になっていれば典型的なバイブル商法を疑わなければならない。

中には自社で販売するのではなく第3者の業者が販売元になっているものもあるが、同じ構造と考えてよい。
(2)その他の広告

大手の新聞の広告に限って言えば上記の出版物広告が大半を占めるが、健康食品の広告等で「良心的な」広告が掲載される事もある。

「良心的」と言うのは上の「バイブル商法まがい」の特徴と正反対で見出しもおとなしく、権威付けも顕著でなく、具体的な経験談も載っていないという意味に於いてである。

ただし、このような広告は新聞広告には極めて少ない。(この形の広告の割合は新聞より一般雑誌の方がやや多い。)もちろん、中身も良心的であるか否かは今回の検証の範囲ではない。
(3)新聞の折り込み広告

新聞の折り込み広告(チラシ)は極めてローカルなものが多いと思われがちだが、調べてみると代替医療関連の折り込みには案外と全国展開の販売会社が多いのに気が付く。

また、前述した出版物広告と似た特徴を持つものが多い。すなわち、大袈裟な見出し、権威を印象づける演出、一見具体的な体験談である。特に折り込みは新聞本体の広告よりスペースがあるためか、具体的な経験談が数多く掲載されているのが特徴である。

著者の在住する埼玉県南部で1ヶ月間に折り込まれたチラシ広告を調べてみると以下のようであった
1.『解説○報』:ある関西の自然食品販売会社(名前は日本○○研究会となっている)が全国展開で出しているチラシ。全部で7例の体験談が掲載されている。
2.『○○食品通信』:これも上の『解説○報』と同じ関西の会社(紹介されている代表者が同じ、ただし住所、会社名は別)のチラシで、広告の形態は先の物と瓜二つで全部で7つの体験談が掲載されている。
3.『○○はホントに凄い!!』:これは北海道の会社(日本医療○○研究所)が出している健康食品の広告で27もの病名〜症状名を挙げ、「これらの症状でお悩みの方は○○を是非お試しください」としてフリー・ダイアルを掲げた上、裏面では「会員からのお便り」という形で5つの体験談が紹介されている。
4.『健康特集』:これはこの地区のローカルのチラシであるが「東大病院から始まった奇跡の○○活性法!」とあり、一種の治療院の広告らしいのだが「室長」の名前と写真入りで、経歴には「1995年青春大学予防医学研究学科卒業後○○学長より直接○○活性法を教授され、○○活性指導者に認定される」とあり、『大学』、『教授』、『認定』と権威付けのキーワードがちりばめられている。

とどめに青春大学:名誉学長 東大医学部元教授○○と実名が記され、更に権威付けがなされている。
5.『気軽に出来る健康法』:市内の漢方専門の薬局が出したもので、「腸毒(宿便)を排除すれば慢性病の改善や生活習慣病の予防ができ健康になれる」として便秘コース(一ヶ月4900円)、宿便コース(同8900円)など漢方を飲んで『宿便』を取れば健康になると宣伝している。権威付けには腸内細菌を解説した文章をある東大名誉教授の出した本から引用して使用している。
6.『○○技術基礎セミナー』:東京都の「全国健康○○普及会」が当地で開催したある療法のセミナーの広告。朝9時から午後6時までのセミナーで10250円。「病気の80%は△△からくる○○が原因です」などと根拠のない事(?)が書いてある。

欧米では、米国の『ニューヨーク・タイムズ』、英国の『タイムズ』、『インディペンデント』等の一流紙はもちろん、『USAトゥデイ』や英国のタブロイド紙に至るまで目を通してみても、欧米の新聞には日本の新聞のような「バイブル商法まがい」も含めて代替医療関連の広告はまず掲載されていない。

ただし地方紙には稀に掲載されることがあるらしく、米国の監視団体『Quackwatch』のホームページには1993年にペンシルヴァニアのローカル紙に掲載されたカイロプラクターの新聞広告が紹介されている。
※注4.

しかし、これは極めて稀な例で、一般に日本のような広告は無いに等しい。

英米の雑誌では栄養補助食品や薬品の広告が散見されるが、日本の広告に見られた「バイブル商法」的なものは皆無でむしろ『自然』を強調した「ソフト」で「良心的」なものが多い。

ただし『Quackwatch』によるとこのソフト路線の雑誌広告にも問題のあるものがあり、例えば1994年のビタミン剤広告で「アンケートによると10人中8人のドクターが健康のため抗オキシダント剤を服用」と宣伝しているものは実はビタミンEに関するアンケートで好意的な意見が80%あったというだけのものだったというし。

同じく1994年のホメオパシー薬の広告には「『自然からのお薬』(商品名)は普通の薬局の薬と違い、体の自然な防衛力と調和して病気の原因に迫ります」とあり、この表現を『Quackwatch』は科学的に証明されていない事を記載して読者をミスリードしていると非難している。
※注4.

ただし、この程度の宣伝文句は日本の広告に比べるとかなりおとなしい方だと感じられるのが正直なところで、如何に日本の広告が特異なものであるかが分かる。